思い出を遡行すると

忘れられない少女が いる

名前すら知らない

彼女への気持ちが、ひょっとしたら俺の初恋……






]V   記憶の海






「くそっ……!!」


どうしようもない苛立ちに、物に当り散らす。
どうして……どうして……!?
どうして俺は、こんなにも苛立たなければならない!?
あんな女、どうでもいい。
どうなっても構わない。
ただのの代わり。愛した少女の身代わり。出来の悪い模造品。

それだけの、筈だろう?イザーク=ジュール。
なのに何故、お前はこんなにも苛立っている?
おかしい……おかしい……おかしい……!!
こんなのは、おかしい。こんなのは、何か間違っている。
俺が気持ちを捧げた相手は、だろう?イザーク=ジュール。



あぁ、そうか。
こんなにも胸が痛むのは、あの女が『彼女』だからだ。
彼女に、似ているからだ。
でもない、『彼女』に似ているから。
幼い日の、恋心。
小さな小さな感情の欠片。
それを彷彿とさせるから。
だからこんなにも切ないんだ。

そうだろう?イザーク=ジュール。
そうだ。そうに決まっている。
それ以外に、俺があの女に気持ちを傾ける筈がない。





あんな女、俺は大嫌いだ。
憎悪しているといってもいい。
そんなにあの女が欲しいなら、熨斗をつけていくらでもミゲルにくれてやってもいいと思うほど。俺にあの女の良さなんて分からない。

の母君を苦しめ続けた女の娘、だろう?
愛人の……それも父親であるルーク=すら捨てた娘。
にもかかわらず、たち母娘を苦しめ続けた売女の娘。
それが、あの女だろう?

アスランやミゲルに色目を使って。
実に母親によく似た娘だ。
所詮、淫売の娘は淫売ということか。


……=
愛した唯一の女性。共にいたいと一生を願った存在。
あの女とは違う。綺麗で穢れのない存在……。
けれどその時、俺の心の中に過ぎったのはではなく。
ほんの二年前の光景……だった。



**




煌びやかなシャンデリア。
贅を凝らした豪勢なつくりの邸宅。
資産家と評判のルーク=の夜会に招かれたのは、俺が十五のときだった。
母上は、あまりいい顔をされなかった。
代々続く名門であることを誇りにされていた母上にとって、成り上がり者のルーク=はお気に召さない存在だったらしい。
でも、招待を受けたのは事実で。無下に断るのは気がひけて。俺はその招待を受けた。


「初めまして、イザーク様。お目にかかれて光栄です」


そう言ってニコリと微笑むのは、その家の令嬢。
=嬢だった。


「こちらこそ、お目にかかれて光栄です。嬢」


手袋に包まれて白い手を取って、その甲に口付ける。
守ってやらねば、と。男なら誰でもそう思うような、繊細で儚い少女。
それが、の第一印象だった。

絹糸のように艶やかな金髪に、極上のルビーを思わせる赤い瞳。
小首を傾げて笑う、花のような微笑。
一目で、心惹かれた。
赤い瞳は、昔逢った一人の少女を彷彿とさせた。

名前すら知らない。儚い俺の初恋。
赤い瞳をからかわれて泣いていた、小さな少女。
恋に落ちるにはあまりにも儚い出会いだったけれど。彼女の印象は、俺の心に鮮烈な印象を残していて。
忘却の彼方に押しやるのは、困難だった。

涙の光る赤い瞳。
微笑んだその笑顔の愛らしさ。
『綺麗な瞳じゃないか』
俺が言った、ごく些細な言葉に笑顔を見せた、少女。
また逢えるか?そう聞いた。
彼女は頷いて。俺もまた逢いたいと望んだのに。
逢うことの叶わなかった、少女。
だからこそこの思い出は、こんなにも美しいままで俺の心に保存されているのだろう。





美しくも愛しい……だからこそ苦い思い出。
は、そんな彼女を彷彿とさせた。

こんなにも少女は、俺の心に忘れられないまでのインパクトを与えていたのか、と。我ながらその愚かしさに自嘲の笑みさえ零れたけれど。
忘れられないほどに印象的だった、あの少女……。


時を遡行していた俺の耳に、歌が飛び込んできたのはその時だった。



伸ばした手 届かない声

暁の空を見上げて 捧げる祈りは

空しさを孕んで

君の面影を探し続ける僕の 心を濡らし続ける




歌っていたのは、女といってもおかしくないほど繊細な美貌の……少年?だった。
年は、俺とはたいして変わらないだろう。
綺麗な声、だった。
やや高めの声で歌うのは、悲しい……切ない歌。
伏目がちにした、赤い瞳。
夜の闇よりなおも濃い、混じりけのない漆黒の髪。
それは、遠い昔に出会った少女を思い出させて。
否、少女そのものだった。


「彼は……」
「ああ、あれは=。私の異母兄ですわ」
「異母兄?ということは……」
「ええ。母親が違いますの」


家の恥といえなくもないことを、はあっさりと俺に明かした。
それだけ、兄妹仲はいい、ということか。


「もう一人、異母姉様がいたのですが……」
「いた?」
「事故で亡くなりまして……。兄はそれが不興のようです。我が家に引き取られるまでは、母親と三人で暮らしていたと言うことですから、兄と姉は仲がよかったのですが、私は……」
嬢……」



君の声 君の笑顔

この心に今も鮮明に 君は残っているのに

もう何処にも 君の温もりは残っていなくて





その歌は、死んだ妹に捧げたものだったのか。
分からなかった。
こんなにも可憐で、愛らしい少女。
そんな少女を哀しませてまで、思う妹。半分は血が繋がらないといって、もう一人の妹は拒絶し続けるのか。


異母兄様」
「……か」
「また、異母姉様に歌を捧げているのですか?」
「……俺が歌えば、あいつが喜ぶ」


空を、見上げる。
美しい月がかかった空。
数多の星々が連なる、美しい空。
美しくも、切ない空。




どうかお願いだから

せめて夢の中だけでも 僕に逢いに来てほしい

もう一度 その微笑を

もう一度だけ 君の温もりに触れさせて

抱く者のない腕の中

君の痕だけが残ってる

切ない余韻を孕んだまま

君の温もりを 望むまま




「今はまだ、そこで待ってろ。そのうち俺も、そちらに逝く……」


……。
眼差しは、遠く。
赤い瞳は、愁いに沈んで。


「……その妹と、似ていたのか?」
「……誰だ?リリア?」
「イザーク=ジュール様ですわ、 異母兄様」
「あぁ、エザリア女史の……。


似ているに、決まっている。あいつと俺は、一対の双子なのだから」


そっけなく言い放つと、ついっと背を向けて。
そのまま、姿を消そうとする。
その背中に向かって、気がつけば声をかけていた。


「お前じゃないのか?あの子は……」
「何のことだか分からない。お前が何を言わんとしているか分からない。……だから、私じゃない」


それがその時、既に男と偽りアカデミーに在学していた だったと、俺は後に知った――……。



**




あぁ、あの女はあの少女に似ているんだ。
赤い瞳も、漆黒の髪も。
寸分の違いなく同じなのに、持っている雰囲気も何もかもが違う。
何より、俺の受ける感情が違う。
からは、不快感しか感じない。
そんな女に、別の感情を向けるなんて、有得ない。間違っている。
俺が愛しているのは であり、あの……幼い日に逢った少女だ……。
断じて、あのいけ好かない女じゃない。

ジュール家のためでなければあんな女、いくらでもミゲルやアスランにくれてやるのに。











『確かに、我が家に 家の助力が必要なことはわかります!しかし 亡き今、婚姻の結びようもないではないですか!』
『お前は知らないことだから無理もないが…… 家にはもう一人、娘がいる。お前も知っているだろう? = は』
『彼の妹なら、亡くなったと聞きましたが?』
『それは違う。ルーク= にはもう一人、娘がいる。 = 嬢…… = こそが、彼女だ』


母の言葉に、呆然となったのを覚えている。
男だと、思っていた。男にしては線が細すぎるし、繊細なつくりをしていたけれど。
あんな冷淡な女なんて、いない。
あれは、男だ。それもとびきり冷徹な。

思い込んでいた矢先に、平手打ちを食らわされた気分だった。


『本物の = の死後、彼女が双子の兄の代わりに従軍したのだ。お前には、 嬢と婚姻を結んでもらうぞ。イザーク』
『なっ……!俺は嫌です!』
『拒否することは許さん。お前は 嬢と婚約すると私に申し入れをしたとき、いったよな?今後一切、いかなる場合においても私の言葉に従うと』
『それはっ……!』


母上は、 との婚約に反対していた。
そんな母上に婚約を許してもらうために、俺は母上に誓約していた。
今後一切、いかなる場合においても母上の言葉に従う、と。


『お前には、 嬢の方が相応しい』
『なっ……!?俺は嫌です!あんな女……!』
『口答えは許さん、これは決定だ』
『母上っ!』


母の決定に、逆らえる筈がなかった。
が、死ねばよかったんだ。
の代わりに、が。
そうすれば俺は、愛した少女と一緒にいられた。どうしてが死なねばならなかった!?

酷いことを、にした。
本当に酷い……酷いことを。下衆と罵られても仕方のないことを。






俺はこんなにも、弱い男なんだ。
大事すぎる、小さな微かな思い出。
心の飢えを満たすためだけに罪もない女を傷つけた俺は、もう二度と、あの少女を反芻することも許されない。

過去を振り返るしか出来ない、弱い弱い男。
それが、俺なのか……。



**




目が覚めたとき、先輩は普段と変わらなかった。
普段のままの、先輩だった。
けれどそれが余計に、痛くて。
私は……私は今までずっと、先輩に甘えてきた。
お兄さんみたいで、みたいで。そうやってずっとずっと、先輩に甘えてきた。
それが、先輩を知らず知らずのうちに傷つけてきたなんて、私は知らなかったんだ。



知らなかったからといって、許されることではないけど。
でも、どうしたらいいのか分からなくて。


?、難しい顔してどうした?」
「先輩……」
「飯、食いに行くぞ」
「はい……」


見上げた先輩の顔は、浮かぶ表情は普段と変わらないのに。
なのに昨日の先輩の、苦しげな声が頭から離れない。
あの切ない声が、頭から離れなくて。

ずっとずっと先輩に甘えるだけだった私は、自分が先輩にあんな思いをさせていることに気づかなくて。それが無性に、申し訳なくて。
どうしたらいいのか、分からない……。

無重力の中を、ベルトを伝っていくと、イザークと鉢合わせた。
クッとイザークの顔が、歪む。
侮蔑たっぷりの目で、こちらを見てきて。
躯を震わせる私の前に、先輩が立った。


「おはよう、イザーク。早いな」


努めて何事もないかのように話す先輩に、イザークが微かに柳眉を吊り上げる。
私だったら、思わず萎縮してしまうのだけど。
先輩は何事も感じていないかのように、むしろ飄々とした態度を崩さなくて。
笑みすら、口元に浮かべている。


「昨晩は、一緒だったのか……?」
「あ?俺とか?勿論、一緒だったぜ?まさか女の子を、食堂で寝かせるわけにもいかねぇだろ?」
「医務室にでも放り込めばいい話だろうが」
「……何、イザーク。ひょっとしてお前、嫉妬でもしてるわけ?」


揶揄するように尋ねる先輩に、思わず呼吸が止まるかと思った。
そんなことあるはずがないと思っても。縋りついてしまいそうになる。少しは……少しはイザークが、私のことを考えてくれているんじゃないか、なんて。


「違うっ!」
「ていうかお前、自分にそんな権利があるとでも思ってるわけじゃないだろうな?てめぇには、嫉妬する権利も心配する権利もねぇんだよ」


低く唸るような、先輩の声。
初めて、聞いた。
先輩は、いつも優しくて。
みたいで。
でも、先輩は『男の人』なんだ。
とは、違うんだ……。


「その女の恥は、婚約者である俺の恥だ。だから……」
「そんなに言うんなら、婚約なんてやめちまえ。……てめぇには勿体ねぇよ」
「なんだと、貴様……!!」
「二人とも、やめろ!」


思わず、大きな声で叫んだ。
一触即発のテンション。
これは、私が生み出してしまった歪みなのか。
一体何処で、全ては狂ってしまったのだろう。
イザークが、好き。
それだけでは、いけないの?
それとも、私がイザークを想うことが、歪みを生んでいるのだろうか。







言い争いを始める俺とミゲルに、が大きな声を上げた。
不意のことに驚いている俺の目の前で、がミゲルの服の袖を軽く握り締める。
……それが、答えなのかよ。
分かっていたことだろう、イザーク=ジュール。
そしてお前も、この結末に満足しているだろう?
これで俺は、この女と婚約する必要はなくなる。
原因は双方の性格の不一致。価値観の相違で片がつく。
これで終わり。
望んでいたはずの結末だろう?満足だろう?


なのになんでお前は、傷ついているんだ。イザーク=ジュール。
なのになんでお前は、心を痛める。
許されないことを、お前はしただろう?
泣いて拒むに、愉悦を感じて。無理矢理躯を開いたのはお前だろう?イザーク=ジュール。
その時、哀れみの片鱗すら、お前は見せなかっただろう?
お前にとってこの女は、その程度だろう?


何を傷つく。イザーク=ジュール。
おかしいだろう。これは。おかしい。
傷つくなんて、おかしい。そんなのは間違っている。
この女にを重ねて。
今度は幼い頃に出会ったあの少女にこの女を重ねるのか。
ふざけるな。
酔狂も大概にしろ。





部屋に戻ったとき、の様子がおかしいことに気づいた。
でも、その時はそれを大したことだとは思わなかった。
イザークと逢って、それで少しナーバスになったんだろう。それぐらいしか、俺は認識していなかった。
の目の前でイザークと言い争いをしたことがまずかったのだろうか。俺が思いついたのは所詮、それだけだったんだ。


「……先輩」
「ん?」


だからに声をかけられたとき、その声の真剣さに、気づけなかった。


「私、気付けませんでした」
「何を?」
「先輩の、気持ち……気づけなかった」
?」


あぁ、ひょっとして昨夜、は気づいてしまったのだろうか。
俺の秘めていた気持ち。
ずっと秘密にすることを自らに誓った気持ち。
それに、気づいた……?

本当は俺も、気づいてほしかったのかもしれない。
気づいてくれることを、願っていたのかもしれない。
……ズルいな、俺。
イザークのこと、本当は俺だってどうこう言えない。
そんなこと、俺自身が一番分かっていることだけど。
でもな、
お前が気にするようなことじゃ、ないんだ。


イザークが、お前ではなくお前の異母妹を見ているように。
婚約者のいるアスランが、婚約者ではなくお前を愛してしまったように。
人の気持ちは、理屈でどうこうできることじゃなくて。
人の感情だけは、初級の算数では解ききれない、未知の領域なんだ。

これだけ想いを捧げれば、相手はこれだけの想いを返してくれるでしょう。なんて。人には当てはまらない。
人の感情は、それだけでは清算しきれない。

だから、
お前が気にするようなことじゃ、ない。
ただ俺が、お前を愛してしまっただけなんだ。


「私は、先輩に何を返せるでしょうか」
?」
「先輩には、たくさんお世話になりました。私は、先輩に何を……どう返せば良いですか?」


違う、
そんなこと、俺は望まない。
弱みに付け込んで、何がしかの関係を結びたいわけじゃないんだ。
……俺に、惨めな思いをさせないでくれ、
お前が欲しい。
渇望し続ける、この両腕。
だからこそ俺は、お前に触れてはいけない。


「……何も、望まない」
「嘘です」
「本当だ」
「私は先輩に、何もしてあげられないんですか?私は先輩に頼りっきりで……なのに……」


ルビーよりも、ガーネットよりも。あらゆる宝石よりも美しい赤い瞳が、真っ直ぐと俺を射抜く。
その瞳に映る俺は、どれだけ醜く映るのだろうか。
綺麗なその瞳に、映るに俺は汚くて。
視線を、逸らしてしまいたくなる。


「イザークへの想いを捨てろと俺が言えば、お前は捨てるのか?」
「それは……」
「出来ないだろ?人の感情は、そううまくいかない。俺が抱いた想いと、お前の抱く想いが一致しなくて。でも一致しなかったからといって、片方にそれを捨てさせることなんで出来ないんだ。……人は、難しいな」
「でも、先輩……」
「それ以上、言うな。
「先輩……」


戸惑うように、 の瞳が揺れる。
綺麗だ、と思った。



人間は死ぬとき、夢を見るという。
過去の自分。己の望みそれら全てを、通してみるのだと。
最期に見るものが、 であったら、俺はきっと笑って逝くだろう。
彼女こそが、俺が戦場で見出した最も美しいものだから。
姿形ではなく、彼女の全てが。心の有様を、俺は美しいと思ったから。


「これ以上、俺を惨めにさせないでくれ」
「先輩」
「お前がイザークを愛した。俺がお前を…… = を愛した。ただ、それだけのことだ。


。愛情は、無償で捧げるものなんだ。俺はこの感情に、お前からの代償を求めようとは思わない」
「でも、私は……」


こらきれずに、紅玉に涙の滴が浮かぶ。
露を含むそれは、濡れたように煌いて。
綺麗……だった。


「だから、最後に一つだけ。いいか?」
「先輩……?」


見上げてくる瞳を見下ろしながら、己の愚かしさに自嘲する。
それでも彼女を望む己の浅ましさに、涙すら出そうだ。

華奢な躯は、俺の腕の中にしっかりと納まって。
その温もりさえも、愛しくて。


「これ以上は何も望まないから……これ以降は、お前の望む『兄』に戻るから……」
「先輩……」
「好きだ……好きだ、 。……愛してる」


耳元で、何度も何度も囁く。
の腕が、そっと俺の背に回されて。
小さな小さな声で、 が囁き返す。


「有難う。有難う……ミゲル。すごく、嬉しい」


『先輩』ではなく『ミゲル』と。そう返してくれたことが、嬉しくて。
抱きしめる腕に込めていた力を抜くと、 は俺の瞳を覗き込むようにして。
しっかりとした声で、言葉を紡ぐ。


「でも、ごめんなさい。私は、イザークが好き」
「……ああ」
「本当に、有難う。でも私は、貴方を愛せません」
「分かってる。……それでいい、 。……有難う」


気持ちの全て。
吹っ切るには難しいけれど。
でも俺は、これでいい。
この結末で、十分に満足。



分かりきっていたこと、だったから。
の心にいるのは、イザークだけだって。分かっていたから。
俺は俺の気持ちを、悔いることなく に伝えることが出来た。それだけで、十分。それだけで、満足する。
恋人にはなれなくても、これから先 にとって一番頼れる場所であれればいい。
何かあったとき、辛いとき。 が一番に縋り付ける場所であれば……俺はお前の、『兄』でいいから。




俺の腕の中で、俺を想って泣く優しい少女の背に腕を回しながら。
俺はただ、そんなことを思っていた。


心は、不思議と穏やかで。
抱きしめた少女は、あまりにも優しすぎた――……。







なんか最近、雲行きが怪しくなってきましたよ?『恋哀歌』
これ、本当にあと二話で完結するの……?
書いてるやつがこんな調子でどうするんでしょうね。
年内完結も、実は少し怪しい……。
て言うか、『ヴァルキュリア』が一番危なくないですか。
一年以上たって漸く半分て……。
うぅっ。何でこんなに遅筆なんだろう。