望まぬ戦い 戦わなくては、守れないものがある。 戦ってでも、守りたいものがある。 それは、願ってやまないものだから――……。 祈念 祈りを、捧げる。 空に、星に。 捧げる祈り。 われらに、星の加護を――……。 神を信じない、コーディネイター。 コーディネイターに、神は存在しない。 だからこそ、太古の『人間(ヒト)』と同じように、身近に『神』を創る。 儚いガラス細工にも似た、薄い防壁に守られる彼らは、『星』にこそ、『神』を求めた。 C.E.70、血のバレンタインにより、本格化した地球プラント間の武力闘争。 漸く争いには終わりが見え始めた。 悲しい、冷たい戦争は、終わるかに……終わったかに見えた。 けれど、終わらなかった。 宇宙は再び、流血の場へとその姿を変えた。 星が、血を吸い上げるのか。 惑星が、深遠に浮かぶ星々が、流血を欲するのだろうか。 戦いなど、誰が望む? 誰が、戦いたいなどと思う? それでも、人は戦い続けるのだ。 ならば、戦いこそが、人の本質か。 他者を妬み、嫉み。 自ら持たぬ物を欲しがり、持つ者を憎悪する。 憎悪し、その果てに戦火を撒き散らす。 それが、人の本質とでも……? 「ったく。堪んないね」 ガシガシと、彼はオレンジの髪をかき回す。 暖かい色をしたそれは、ふわり、と彼の目の辺りにかかった。 まったくもって、堪らない。 なぜ、戦争をしなければならない? 何故、愚かしくも戦い続ける? 何故、手を取り合うことが出来ない。 相手が己の持つ物を欲しがるから、戦争をする。 では一体、どこで休戦すればいい? 銃を下ろしたその時に、背中から撃たれることも有り得る。 結局、信頼の問題なのか。 そしてその信頼をこそ、休戦中の二年間で築き得なかったことこそが問題なのか。 答えは、見つからない。 正しい答え。 唯一絶対の、宇宙の真理。 それがもしも存在するならば、それは教えてくれるのだろうか。 『答え』を――……。 「戦いたくなんてないさ、誰だって」 断末魔の悲鳴。 阿鼻叫喚。 無残な地獄絵図。 それを知ってなおも、戦場に在る軍人。 戦いたくなんてないさ、誰だって。 けれど、戦わなくては守れない。 守りたいものも。守りたい人も。 ……守れない。 守れる力は、あるのに。 なのに、守れない。 そんなのは、死んでもごめんだ。 だから、戦うのか。 守りたいから。 守れるだけの力はあるから。 そして戦火は、広がる。 戦争をコントロールする、だと? 出来るものなら、やってみろ。 前線にも出ずに、その悲惨な現実も知らずに。 ただ後方で、安全な場所で安穏として。 殺戮を命じ、戦火の拡大を命じる。 戦火の縮小など、できるわけがない。 所詮何も知らない連中の、机上の空論。 一度でも前線に出てみるといい。 そしてその目で、その実態を見てみるといい。 狂うことも許されず、涙することも許されない。 ただ、闇雲に敵を殺す殺人マシーンにならなければ、自分自身すら救えない。 戦いたくなど、ない。 普通に、平和に。 愛する人と一緒にいたい。 けれどそれが出来ない世界だから。 普通に、平和に。 暮らしていれば、愛する人が殺されてしまう世界だから。 だから平和を。 この『命』で『買う』。 戦いなんて、望まない。 戦わず、平和に。 君の傍に在りたい。 それでも、それじゃあ、君を守れないから。 だから、戦う。 望まぬ戦場で、君と共に在る未来を見て――……。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 作中の『君』はお好きなお相手で。 ドリームでもカップリングでも構いません。 うちのハイネ様は戦うの好きそうなんですけど……。 あてここは、戦うのは嫌いだ、ということで。 ここまでお読みいただき、有難うございました。 |