いつまでも、一緒にいよう。 それは、戦場では儚い願いでしかない――……。 一片の永遠 カスタム機。 それは、パイロットであれば憧れのもの。 自分専用にカスタマイズされた、自分専用の機体。 パイロットであれば、憧れてやまないもの。 それは、名誉とは関係ない。 くだらない功名心とも一線を画す。 ただ、憧れてやまないもの。 ただ、求めてやまないもの。 それが、これだ。 そして俺は、名誉あるカスタム機を賜ったわけだ。 それも議長自ら。 ついでに言うと、最新鋭の機体を。 まっすぐと、巨神を見上げる。 それは、まさしく神だ。 大きな、人ならぬ存在。 俺の命を託す存在。 オレンジにカラーリングされた、俺だけの機体。 「相棒」 呼びかける。 命宿らぬその機体に、呼びかけて。 触れれば、ひやりとした感触。 熱のない……命の通わぬ相棒。 「俺の、機体……」 別に、カスタム機を賜るのはこれが初めてじゃない。 自分で言うのもなんだが、俺は結構優秀なパイロットだから。 二度目の、カスタム機。 それでも、嬉しさは前回の比じゃない。 「俺の、“グフイグナイテッド”」 “グフイグナイテッド” それが、俺の機体の名前だ。 先日軍事工廠からロールアウトされたばかりの最新鋭の機体。 地上での、俺の相棒。 宇宙での相棒は、“ブレイズザクファントム” けれどザクは、大気圏内を飛翔することも出来ない。 これは、違う。 地上戦を想定されて創られた、グフイグナイテッド。 戦場は、泥沼化していた。 あれほどの思いをして、あれほどの涙を流して。 あれだけ仲間を失って、多くの別離を経験して。 掴んだはずの未来は、所詮砂の王冠でしかなかった。 手に触れたとたんに、脆く崩れ去った。 願った未来。 望んだ筈の平和。 祈り続けた永遠。 全てを奪ってなおも、俺たちは未来を望む。 血の道を突き進むことになろうとも、未来を。 閉ざされた、コーディネイターの未来を。 希求してやまないこの心こそが、争いの根源か。 それでも、望む。 それでも、願う。 そしてそのための力を……求める。 そして、手にした。 俺の剣。 すでに手にした剣とは違う……もう一振りの剣を。 手に、入れた。 「ずっと一緒だ。俺の命、お前に預けるから」 そして、今度は“ブレイズザクファントム”に触れた。 そのままに、呟く。 「今まで有難う。最高の相棒だったぜ?俺の“ブレイズザクファントム”。……必ず帰ってくる。そのときはまた、共に宇宙(ソラ)を駆けよう。待ってろ……」 どうせ、仲間はいつか死ぬ。 一緒にいよう。 共に戦後を迎えよう。 所詮気休めにしかならない、それが現実。 けれど、機体は違う。 最後まで、全てを共にする。 散るときもまた、一緒だ。 だから、並ならぬ愛情を、パイロットはその機体に注ぐ。 戦場で頼れるものは、己。 そして、機体だ。 滅ぶときは、共に滅びる。 共に炎に焼かれて。 あるいはビームに焼かれて。 機体とそのパイロットは、全てを共にするのだ。 コックピットに乗り込む。 今まで乗り回してきた機体とは違う……けれど同じ。 落ち着くのは、同じ。 大切に思う気持ちもまた、同じ。 「一緒に行こう、“グフイグナイテッド”」 そして、共に創ろう。 今度こそ、完全な『平和』を。 侵されることのない平和を。 確かな、未来を。 「行くぜ?相棒」 囁く。 アイセンサーに光が宿る。 システムに、異常は無し。 高らかに、彼は名乗る。 誇らしげに、その名を。 命預けるその存在の、名を。 「ハイネ=ヴェステンフルス、グフ、行くぜ!」 手の中には、一片の永遠。 決して永遠ではない。 けれど永遠の存在。 滅びるときは、一緒に。 勝利も、共に。 最期は、共に同じ炎に灼かれる。 手の中に、一片の永遠を。 完璧な永遠でなくても構わない。 この手の中の確かな“絆”こそが、戦場での全て――……。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 微妙ポエム。 このお題で小説はキツイです。 じゃあイラスト描けよって? ……MS描けるほどの画力は持ち合わせていません。 よって、ポエム。 軍人さんにとって、機体って愛着沸くもんらしいですよ。 それはきっと、自分が命を預ける存在だからでしょうね。 そう思いながら、書きました。 それでは、ここまでお読みいただき、有難うございました。 |