――――――懺悔します。私は罪を犯しました。





胸中愛華






懺悔します。




神よ、私は罪を犯しました。

罪を、犯しました。
「神の愛し子」と呼ばれる私は、そう呼ばれるが故に、罪人となりました。



懺悔します。




愛してはいけない人を、私は愛しました。
誰よりも、何よりも愛しい人。
だから私は、決して、この想いを告げぬことを、自らに誓いました。
綺麗事だったのかも、しれません。
それでも私は、彼女を罪に引きこめなかったのです。
罪人の汚穢に塗れるのは、私一人で十分だったのです。



懺悔します。




けれど神よ、私は知りました。
私に残された時間の、あまりにも少ない事を。
――――これが、貴方の私への、罰ですか?
罪を犯した私への、罰なのでしょうか?
嗚呼、神よ。けれど私は、貴方を恨みますまい。
むしろ貴方の仕打ちに、感謝致しましょう。
そしてこれが、貴方の意図された事なら、私はその悪意に、悪意で以って返しましょう。





そう、これが貴方の意思ならば。
私は、徹底的に狡猾に生きましょう。
残りの人生全てをかけて、愛する人の全てを縛れるように。
そのためだけに私は、消滅を望みます。
彼女の私を想う気持ちを、利用して。
この身を滅ぼす事で、永遠に癒えぬ傷を。
私は彼女に残します。




彼女に遺された傷痕に、永遠を。
これが私の、運命だったのですか?
それならばきっと、この結末は、初めて会ったその日に、確定していたのかもしれませんね。




赦しを乞うつもりはありません。
何故なら私は、自ら望んで、罪人になったのですから。
自ら進んで、貴方に叛逆したのです。
誰よりも、貴方の恩寵深い私自ら……ね。
けれど神よ。
一つだけ。ただ一つだけ、この願いを聞き入れてください。



ただ、どうか――――。



罪はどうか、わが身一つに――――。
私は、地獄の劫火に焼かれようと、永劫の苦しみを受けようと、構いません。
それだけの罪を、私は犯したのです。それほどの罪を、私は犯すのですから。
けれど神よ。
我が身一つの罪なれば……。
罰下さるるも、我が身一つに……。
どうか愛しい異母妹には、咎め無きように。





彼女は私の、たった一つの華だから――――……。
私が愛した、たった一つの。
華なのですから――……。