貴方がモテるコトくらい、十分承知しているわ。
この私が好きになったんですもの。
それくらい、当然でしょ?
でも、ムカつくのは、ムカつくの!
君、ありてこそ…
「ちょっと、どういうことよ!」 「え?どうって?」
戦争が終わり、奇跡的に命を助かったフレイは、キラと元の鞘に納まり。 己の気持ちを漸く素直に伝えたフレイを、キラは許し。 2人はまた、恋人に戻っていた。
そんなフレイの帰ってきて早々きつい言葉を投げかけられ、さすがのキラもややびくつく。
「何よ、それ」 「え?チョコレート」 「そう。チョコレート。どうしたの?」 「カガリとラクスが、くれたんだ」
キラがチョコレートを好きなのは、知っている。 大好きな人の好きなもの、チェック済みに決まってる。 そんなの、表には出さないけど。 でもね、キラ。私だってちゃんと、考えてるのよ?
キラが抱えているのは、綺麗にラッピングされた、既製品。 そのうちの一つは、フレイも知っている有名ブランドのチョコレート。 おそらくそれは、ラクスからだろう。 もう一つは、可愛らしくラッピングされた、チョコレート。 いわゆる、義理チョコの……でもそれなりの値のするもの。 おそらくそれが、カガリから。
綺麗にラッピングされた、色とりどりのチョコレート。 嬉しそうなキラが、癪に障る。
「ね。フレイは?」 「知らないわよ!」 「フレイ?」 「それだけ貰ったんなら、私からなんていらないでしょ!」
バタン!と扉を勢いよく閉めて。 フレイは自室に駆け上がった――……。
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「私の、バカ……」 また、やってしまった。 勝手に怒って、勝手にいらだって。 また、キラを傷つけた。 これじゃあ、あの頃とちっとも変わらない。 キラは、変わったのに。 自分だけ、変われていない……。
戦争中、フレイは自分勝手な悲しみから、キラを傷つけた。 キラを傷つけて、殺そうとまでした。 そんなフレイを……醜い自分を、キラは許してくれた。 優しい……優しすぎるくらい、優しい人。
そんなキラを、フレイは傷つけた。 死んでしまえばいいと、願いさえした。
それは、決して許されない。 許されてはならない、罪……。 そんなフレイを、キラは許してくれた。 そして父親を亡くしたフレイに、一緒に生きようと言ってくれた。
嬉しかった。本当に、嬉しかったのだ。 キラの思わぬ優しさに触れて、キラを愛するようになった。 けれど復讐に目を奪われていたときは、そんなことにすら気づけなくて。 随分と、遠回りをしてしまったけれど。 今はこうして、一緒にいることが出来るのに――……。
素直に、なれない。 そんな自分が、時々嫌で堪らなくなる。 今日だって、あんなことを言いたかったわけではないのに……。
今日は、バレンタインだから。 ちゃんと、自分の気持ちを伝えよう、と。 そう考えてさえいたのに。 つまらない嫉妬をして、八つ当たりして……。
「もう少し、材料を買ってさえいれば……ううん。手作りなんて、しなければよかったのよ」
溜息を吐いて、デスクの上に目をやる。 ブランド物のチョコレートを贈った、ラクス。 ブランド物ではないとはいえ、相応のものを贈ったカガリ。
既製品にすれば、よかった。 手作りなんてして、結局全て失敗して。 ブランド物の既製品であれば、フレイは美味しいものをいくらでも知っている。 けれど、それではいけないと思った。 きちんと気持ちを伝えるなら、手作りに挑戦して、と。 自分の手で美味しいものを作って、キラにプレゼントしたかったのに……。
「フレイ」 「キラ……私……」 「あのさ、フレイ。これ、あげる」
キラはそう言って、プレゼントの包みを渡す。 治められていたのは、フレイも知っているブランドのチョコレートと、指輪。
「バレンタインってさ、本当はバレンタインって人が死んだのを、悼む日なんでしょ。僕らコーディネイターには、血のバレンタインの日でもあるけど。その人が死んだ日を、恋人の日にしたらしいけど、本当は女の子がチョコレートを贈る日なんて決まりはないみたいだよ。すっかり、儀礼化しちゃったみたいだけど」 「キラ……?」 「だからそれは、僕の気持ち。僕、フレイとずっと一緒にいたいよ?それじゃ、駄目かな」
覗き込んでくる、アメジストの瞳。 綺麗な瞳には、フレイしか映っていなくて。
「ううん……ううん。すごく、嬉しい。有難う、キラ」 「フレイが喜んでくれたら、僕も嬉しいよ。……僕は、君を不幸にしてばかりだったから」
淋しげなアメジストの瞳に、胸がいっぱいになった。 そんなこと、ないのに。 フレイが勝手に逆恨みしていただけなのに。
「そんなことないわよ、キラ」 「フレイ?」 「私、そんなこと思ってないわ。私……私が、キラと一緒にいたいと思ったのよ」 「本当……?」
尋ねてくるキラに、笑顔で頷く。 一緒にいたいと思った。 だから、一緒に生きようとしている。 傷を舐めあうのではなく、寂しさを埋めるためでもなく。 一緒に生きたいと願ったから、一緒にいる。
「私……ごめんなさい」 「どうしたの?」 「私、チョコ全部失敗しちゃって……手作りなんて、しなければよかった……」 「手作り、してくれたの!?」
驚いたようなキラに、クスリと笑う。 確かに、思いもつかないことだろう。 フレイだって、そんなことをする女の子たちを、寧ろ軽蔑していたのだから。 バカじゃないの?って。
「でも、失敗しちゃって。ごめんなさい」 「いいよ、そんなの。その気持ちだけで、嬉しいから。……でも、来年は、食べさせてね?」 「キラ?」 「だって、ずっと一緒でしょ?」
囁いて、キラの指がフレイの頬に触れる。 優しい優しい、人。
「ずっと一緒にいよう、フレイ」 「キラ……」 「今度こそ、君の幸せを守るから」 「キラ……!」
キラの胸に、飛び込む。 優しくキラが、フレイの体を支えて。
ずっとずっと、私のこと、好きでいてくれる?
プライドの高いフレイは、そんなこと言えやしないけれど。 キラは、分かってくれる。 分かって、傍にいてくれる。 それで、いい。
抱き返してくれる人の温もりに浸りながら、フレイはそう考えた。
幸せに、なろう。 そのために、ずっと一緒にいましょう――……? 一緒に、幸せになるために……。
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バレンタインって何時だよ。な時期にこんなものを書いてしまってどうするんですかね。 あ、これも一応フリー小説にします。 欲しいなぁと思ってくださる方は、是非どうぞ。
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