たとえ何を犠牲にしてでも






例え何かを犠牲に捧げても。

例えそのために命を失うことになろうとも、手に入れたいものが在ることを、知った――……。











白い、柔らかなシーツの上。

隣で眠っているのは、夢にまで見た温もり。

胸に在るのは、言い知れないまでの歓喜と絶望。

相反する感情は、彼の中では等しく整合する、矛盾のないものだった。

彼が犯してしまった罪。それ故に――……。

組み敷いた躯が、ピクリと身動ぎした。

覚醒するのだろうか。

覚醒した少女が彼をなんと罵るか、それはもう覚悟の上だった。

それでもなお、望んだ。

少女を我が物とすることを。そのためなら、何も惜しくないと言い切ってしまえるほど、強く。

「アスラン……」

囁いて、そのこめかみに口付ける。

汗で張り付いた前髪を、そっと払ってやった。

「んぅ……んん……」

可愛らしい唇から洩れる、寝言。

愛したことは、罪だった。

如何に言葉を連ねたとて、それは決して変わらない。

彼が、妹を愛した。

そして妹を陵辱した。

ただ、それだけのこと。

心など、いらないから。永遠の片恋でかまわないから。

だからどうか……罪は、俺一人に下してください……。

罰を下すなら、それはどうか俺一人に。

妹は、関係ないから。

「愛している……アスラン……」

愛しているんだ……。

いっそこの感情を捨ててしまえたら、どれだけ良かっただろうか。

けれど捨てられないから、こうまで苦しい。

そして捨てることを、彼は望まない。

少女を愛している。

そのためならば、全てを捨ててしまってもかまわないから――……。

何を犠牲にしてもいい。

望むなら、この命を捧げてもかまわない。







愛している。

けれど、愛してくれと、そう望む気はないから。

お前は俺の妹。

血の繋がった、だからこそかけがえのない存在。

血の繋がった、だからこそ、いながらにして俺を苦しめ続ける存在。

手に入れたかったんだ。どうしても。

愛してしまったんだ。罪だということは分かっていたけれど。

愛しい愛しい妹。

それを俺は……。

力に物を言わせて、無理矢理に蹂躙した……。

何度も、何度も。

快楽に身を震わせながら、嬌声を洩らした彼女の唇を、そっとなぞる。

甘い甘い吐息に、胸が熱くなったのを、覚えている。

必死になって抵抗する怯えた色を宿す翡翠の双眸に、心は高揚した。

望んでいたのは、これなのだ、と。

望んだものは、ただ一つ。

愛されることでも、同じだけ愛し返されることでもない。

妹の心に、少しでも己を残せればよかった。

例えそれが、憎悪でも。絶望でも。妹が彼に対し抱く感情に、頓着する気はなかった。

「アスラン……」

早く、目を覚ましてほしい。

その唇が紡ぐものがどんなに酷い罵りでも、甘んじて受けるから。

「早く、目を覚ませ……」

そしてその声を。

その声を聞かせて……?

綺麗な翡翠の瞳を、憎悪に輝かせてもいいから。

宵色の髪をそっと梳きながら、囁く言葉に、夜の闇がゆるりと滲んで。

ゆっくりと、溶けていった――……。







例え何かを犠牲にしても、手に入れたいものが、あった。

その前にあっては、モラルも、ましてやその感情を掻き立てる存在の気持ちも関係なく。

ただ、ほしいと願った。

欲しい者は、ただ一つ。

誰よりも愛しい、だからこそ罪深いこの感情の行く先。

愛しい愛しい、妹。

ただ、その人だけ――……。







いい加減私、兄妹モノ好きだなぁ、と思ってみたり。

でも、これが一番萌えます。

ポイントは、姉弟じゃなく、兄妹が萌える、ということでしょうか。

それにしても。

この場合、この兄妹の名前ってどうなるんだろう。

アスラン=ジュール?それとも、イザーク=ザラ?



……どちらがお好みですか?←聞くな!

ここまで読んでいただき、本当に有難うございました。