〜Epilogue〜









 戦争から、半世紀が過ぎた。
 彼は花束を手に、その場所へ向かっていた。


「ニコル……か?」
「ディアッカさん!?」


 偶然行き会った二人は、そのまま目的地に向かって歩き出す。
 目的地は、小さな墓。
 丘の上に設えられた、本当に小さな墓に、銘は彫られていない。


「イザーク様に頼まれて、あの方の髪を、埋めたんです」
「そうか……」
「一緒に、木の苗を植えました。本当に小さなお墓だったから、目印になるかと思って」
「うん……」


 ニコルの言葉に、ディアッカは頷く。
 半世紀のときは、確実に彼らを老いへ導いていた。
 けれど、それでも彼らはそこに行って。
 そして目を、瞠った。


「イザーク様、ですね」
「……だな」


 ニコルが植えた苗は、成長していた。
 その木が、小さな墓を守るように、枝を広げて。


「心は、貴女の傍に。イザーク様はそう仰っていました。本当に……」
「あぁ。イザークの心は、此処に帰ってきたんだな……」


 二人はそう、思った――……。