〜Epilogue〜 彼は花束を手に、その場所へ向かっていた。 「ニコル……か?」 「ディアッカさん!?」 偶然行き会った二人は、そのまま目的地に向かって歩き出す。 目的地は、小さな墓。 丘の上に設えられた、本当に小さな墓に、銘は彫られていない。 「イザーク様に頼まれて、あの方の髪を、埋めたんです」 「そうか……」 「一緒に、木の苗を植えました。本当に小さなお墓だったから、目印になるかと思って」 「うん……」 ニコルの言葉に、ディアッカは頷く。 半世紀のときは、確実に彼らを老いへ導いていた。 けれど、それでも彼らはそこに行って。 そして目を、瞠った。 「イザーク様、ですね」 「……だな」 ニコルが植えた苗は、成長していた。 その木が、小さな墓を守るように、枝を広げて。 「心は、貴女の傍に。イザーク様はそう仰っていました。本当に……」 「あぁ。イザークの心は、此処に帰ってきたんだな……」 二人はそう、思った――……。 |