見たくなど、なかった。 知りたくなどなかったのに……。 それでも、見なかったことには出来ない。 ならばこの感情を、この虚無感を、どこへ持っていけばいい? その時私が胸に抱いた、想い。 その感情が、戦争を呼ぶのだろう。 それでも……!! それを抑える術など、知らない。 知りたくもない。 逆巻く感情のままに、決意する。 復讐を……!! 奴らに……ナチュラルに破滅を――――!! 鋼のヴァルキュリア #01前奏曲 「皆にも紹介しよう。=だ」 「=です。よろしく」 任務のために召集された面々は、そこで一人の人物と対面することとなった。 一目見て、彼らは一様に驚きの声を上げた。 透き通るように白い肌。 肩先で切り揃えられた、艶やかな漆黒の髪と、同色の瞳。 紅い唇に、細い華奢な肢体。 どう見ても、それは女性だった。それも、年のころは十五、六歳の、まだ、『少女』と称される位の――……。 「彼女には今回、君たちの任務に同行してもらうこととなった」 「女性が……ですか?」 「心配しなくとも、彼女は優秀だ。何といっても『赤』だからな。それに、君たちとて噂には聞いていよう『鋼のヴァルキュリア』のことは」 「はい」 「彼女だ」 ザフト軍におけるエリートの証し、『赤』を纏う少女。それだけでなく、『鋼のヴァルキュリア』の名で敵味方にその異名を轟かせている人物。 それが目の前の、それもこんなに華奢な少女? 皆の興味と関心は、一気に彼女に向く。 「彼女には、MSジンによる支援を行ってもらう。良いな?では、散開!」 「はっ!」 一様に敬礼し、散開する。 も当然、それに倣った。 しかし廊下を曲がろうとしたその時、不意に彼女は腕を掴まれた。 「……、か?お前、の妹のか!?」 「兄……さん?ひょっとして、ミゲル兄さん?」 「やっぱり!!なんだな!?」 それまで硬く張り詰めていた少女の表情が、一気に緩む。 どこまでも明るいその笑顔は、相手に対し、全面的な信頼を寄せる者のそれだった。 そのまま、少女はミゲルに抱きつく。 ミゲルも、愛おしそうに少女を抱き寄せた。 「まさかこんなところで、兄さんに会えるなんて!!」 「俺も吃驚したよ。まさかが、『赤』を着るなんてなぁ……!!そういえば、は?は元気にしているのか?」 「兄さ……兄さんは……」 兄のことを持ち出されると、少女は言葉に詰まってしまった。 大きな瞳からは、大粒の涙が溢れている。 それを見て、ミゲルは悟ってしまった。悟らざるを、得なかった。 彼女の兄は、もう――……。 すべてを悟って。それでミゲルは、無理矢理微笑った。 本当に哀しい思いをしたのは、彼女なのだから――……。 少女の頭を、彼は優しく撫でた。 「それじゃあ今日は、ミゲル兄さんが一晩中、可愛いの話を聞いてやるよ。……オロール!お前、悪いけど、他の部屋に行ってくんね?」 「OK,分かった」 オロールはちらり、とに目をやったが、結局何も言わなかった。 そのことに、ミゲルは感謝する。 彼のことを『兄さん』と呼び、慕うは、彼にとっても可愛い『妹』なのだ。 「それでは、私めの部屋に参りましょうか、嬢」 「うん!」 まるで臣下が礼をとるかのように、ミゲルはわずかに腰を折り、に向かって手を差し伸べる。 そのまま悪戯っぽく笑うと、もつられて笑みを浮かべた。 その笑顔に、ミゲルは安堵の溜息を洩らしたのだった――……。 <<<* Next * Top *>>> +−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+− ミゲル夢?って思われた方、あなたは正しい!! サガミ的にイザーク中心、アニメに沿った長編スタートのはずだったのに、いつの間にか出張りまくる男、ミゲル=アイマン。 いや、彼のこと好きですよ。 さっさと退場されましたけど(泣)。 アニメに忠実にって事は、殺さなくちゃいけないってことですよね。 殺せるかな、あたし……。 思わず天を仰ぐサガミでした。 長くなりそうな連載ですが、最後までお付き合い願えるとありがたいです。 |