――――……イザーク?―――― ――――お前をいぢめた美人な。あれがこれ、お前にってさ。詫びらしいぞ―――― ――――薔薇……?造花ね。でも、綺麗……―――― ――――お前、これ見て思うこと、それだけ?―――― ――――……?うん……―――― 少女が答えると、彼女が兄とも慕う青年は、笑った。 大爆笑。まさにそんな感じで。 ――――もう!何なのよ、兄さん!!―――― 少女が憤慨する。 青年が爆笑する。 ――――この日々が続くことを、私は望んでいたのに――……。 鋼のヴァルキュリア #04鎮魂曲1〜X〜 「お帰り、」 「さん、お帰りなさい」 「ただいまアスラン、ニコル。あれ?ラスティは?」 が尋ねると、二人は気まずそうに顔を見合わせた。 いつもなら、真っ先に声をかけてくるのに。 シミュレーションが終わった後も、食事の時も。なのに何故、今ここに彼がいないのだろう? 「……死んだよ」 「地球軍の士官に、撃たれたそうです。遺体も、回収できなかったそうですよ」 「嘘……だってラスティ、帰ってくるって言ったよ?」 嗚呼。どうして気付かなかったのだろう?隊長が『最後の』一機と言った時に。 ラスティが任務に成功したなら、奪取し損ねた『最後の一機』など、存在しなかったということに。 なんてふざけたことを言いながら、今にもひょっこり現れてきそうなのに。 それが、死んだなんて――……。 「ミゲル、俺、伝言に来たんだ。隊長がお呼びだ。早く着替えて、一緒に行こう。俺も呼ばれてるんだ」 「さんは僕と一緒に、ブリーフィングルームにでも行きましょうか」 「ん。分かった。行ってくるね、兄さん」 「ああ。あまり落ち込むなよ、!」 「は〜い!行こ、ニコル」 ミゲルの忠告に、は笑顔で答える。 しかし、その笑顔は、どこか硬い。 (俺が守ってやるからな、……) その笑顔を見ながら、心中、ミゲルはそう、呟いた――……。 「オリジナルのOSについては、君らもすでに知ってのとおりだ。 なのに何故、この機体だけがこんなに動けるのかは分からん。 だが、我々がこんなものをこのまま残し、放っておくわけにはいかんということははっきりしている! 捕獲できぬとあれば、今ここで破壊する。戦艦もな。侮らずにかかれよ」 「はっ!」 「ミゲル、オロールは直ちに出撃準備!今度こそ完全に息の根を止めてやれ!」 「アデス艦長、私も出撃させてください!」 『好戦的』という言葉から最も遠いアスランの申し出に、アデスもクルーゼも一瞬目を見張る。 しかし、その申し出を受け入れることは、できない。 MSは、無尽蔵にあるわけではないのだ。 「機体がないだろう?それに君は今回、敵の新型起動兵器の奪取という重要な任務を、すでに果たしている」 「今回は譲れ、アスラン。ミゲルたちの悔しさも、君に引けはとらん」 「はい」 アスランは頷いた。 頷いたが、納得したわけではない。 あのMSに乗っているのは、彼の親友かもしれないのだ。確かめなくては――……。 アスランは、心ひそかに決意する。 命令に、違反する事を――……。 「聞いた?D装備だって」 「要塞攻略戦でもやるつもりかな、クルーゼ隊長は」 ブリーフィングルームにはその時、四人の男女がいた。 、ニコル、ディアッカ、それにイザークだ。 イザークはソファーに腰掛け、ディアッカとニコルはガラス窓に相対するような格好で立ち、はガラス窓に背をあずけて立っていた。 「でも、そんなことしてヘリオポリスは……?」 「しょうがないんじゃない?」 「自業自得です。中立とか言っといてさ」 ニコルの発言に、イザークとディアッカは冷笑でもって答える。 は、無言だった。 彼女は、イザークの手が、ドリンクのボトルを放ったり掴んだりするのを、ぼんやりと眺めていた。 「さんは?」 「私もイザークたちに賛成よ」 「そんな……」 「ニコルは、優しいね」 はうっすらと微笑んだ。 ガラス窓の向こうでは、奪取したMSやジンの整備が行われている。 それを横目で見ながら、独り言のように彼女は呟いた。 「私は、ナチュラルなんて、嫌いよ。みんな、死んでしまえばいいわ。……ナチュラルに味方する奴らもね」 「さん……」 「ミゲル兄さん、無事に帰ってくるといいけれど……」 呟いて、はぎゅっとペンダントを握り締めた。 コーディネイターのミゲルがナチュラルに後れを取るなどと、尋常なことではない。 彼の実力を知らないわけではないが、油断は禁物だ。 (どうか、ミゲル兄さんを守ってね、兄さん――……) ミゲルは、の親友だ。 きっと、守ってくれるに違いない。 そう願って、は漆黒の双眸を伏せた。 ――――祈るように。 のその様を、イザークの冷たいアイスブルーの瞳が、じっと見つめていた――……。 +−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+− 次回、ミゲルを殺しますと言っておきながら、結局殺せていない緋月です。 次こそ、次回こそは彼を殺します。 しかし、漸くこの連載も夢らしくなってきたと思いません? ……まだまだですか? 精進します。 突然ですが、皆さん緋月の駄文どう思われます? いまいち反響が来ないので、どうしていけばよいのか分からないのが現状です。 ご意見ご感想などありましたら、ぜひカキコするなりメールするなりしていただけないでしょうか? 少しでも多くの方に満足していただけるように、未熟者は未熟者なりにがんばりますので。 よろしくお願いしますね。 それでは、ここまで読んでくださって、有難うございました。 |