――――、イザークがお前にってさ――――

――――……イザーク?――――

――――お前をいぢめた美人な。あれがこれ、お前にってさ。詫びらしいぞ――――

――――薔薇……?造花ね。でも、綺麗……――――

――――お前、これ見て思うこと、それだけ?――――

――――……?うん……――――

少女が答えると、彼女が兄とも慕う青年は、笑った。

大爆笑。まさにそんな感じで。

――――もう!何なのよ、兄さん!!――――

少女が憤慨する。

青年が爆笑する。


――――この日々が続くことを、私は望んでいたのに――……。



ヴァルキュリア   #04魂曲1〜X〜




「お帰り、

さん、お帰りなさい」

「ただいまアスラン、ニコル。あれ?ラスティは?」

が尋ねると、二人は気まずそうに顔を見合わせた。

いつもなら、真っ先に声をかけてくるのに。

シミュレーションが終わった後も、食事の時も。なのに何故、今ここに彼がいないのだろう?

「……死んだよ」

「地球軍の士官に、撃たれたそうです。遺体も、回収できなかったそうですよ」

「嘘……だってラスティ、帰ってくるって言ったよ?」

嗚呼。どうして気付かなかったのだろう?隊長が『最後の』一機と言った時に。

ラスティが任務に成功したなら、奪取し損ねた『最後の一機』など、存在しなかったということに。



――――『お帰り、ちゃん☆遅かったね。あ!ひょっとして!MAに後れを取って捕虜にでもなりかけた挙句ミゲルに姫君のように救出された!?』――――



なんてふざけたことを言いながら、今にもひょっこり現れてきそうなのに。

それが、死んだなんて――……。

「ミゲル、俺、伝言に来たんだ。隊長がお呼びだ。早く着替えて、一緒に行こう。俺も呼ばれてるんだ」

さんは僕と一緒に、ブリーフィングルームにでも行きましょうか」

「ん。分かった。行ってくるね、兄さん」

「ああ。あまり落ち込むなよ、!」

「は〜い!行こ、ニコル」

ミゲルの忠告に、は笑顔で答える。

しかし、その笑顔は、どこか硬い。

(俺が守ってやるからな、……)

その笑顔を見ながら、心中、ミゲルはそう、呟いた――……。


*                     *



「オリジナルのOSについては、君らもすでに知ってのとおりだ。

なのに何故、この機体だけがこんなに動けるのかは分からん。

だが、我々がこんなものをこのまま残し、放っておくわけにはいかんということははっきりしている!

捕獲できぬとあれば、今ここで破壊する。戦艦もな。侮らずにかかれよ」

「はっ!」

「ミゲル、オロールは直ちに出撃準備!今度こそ完全に息の根を止めてやれ!」

「アデス艦長、私も出撃させてください!」

『好戦的』という言葉から最も遠いアスランの申し出に、アデスもクルーゼも一瞬目を見張る。

しかし、その申し出を受け入れることは、できない。

MSは、無尽蔵にあるわけではないのだ。

「機体がないだろう?それに君は今回、敵の新型起動兵器の奪取という重要な任務を、すでに果たしている」

「今回は譲れ、アスラン。ミゲルたちの悔しさも、君に引けはとらん」

「はい」

アスランは頷いた。

頷いたが、納得したわけではない。

あのMSに乗っているのは、彼の親友かもしれないのだ。確かめなくては――……。

アスランは、心ひそかに決意する。

命令に、違反する事を――……。


*                    *



「聞いた?D装備だって」

「要塞攻略戦でもやるつもりかな、クルーゼ隊長は」

ブリーフィングルームにはその時、四人の男女がいた。

、ニコル、ディアッカ、それにイザークだ。

イザークはソファーに腰掛け、ディアッカとニコルはガラス窓に相対するような格好で立ち、はガラス窓に背をあずけて立っていた。

「でも、そんなことしてヘリオポリスは……?」

「しょうがないんじゃない?」

「自業自得です。中立とか言っといてさ」

ニコルの発言に、イザークとディアッカは冷笑でもって答える。

は、無言だった。

彼女は、イザークの手が、ドリンクのボトルを放ったり掴んだりするのを、ぼんやりと眺めていた。

さんは?」

「私もイザークたちに賛成よ」

「そんな……」

「ニコルは、優しいね」

はうっすらと微笑んだ。

ガラス窓の向こうでは、奪取したMSやジンの整備が行われている。

それを横目で見ながら、独り言のように彼女は呟いた。

「私は、ナチュラルなんて、嫌いよ。みんな、死んでしまえばいいわ。……ナチュラルに味方する奴らもね」

さん……」

「ミゲル兄さん、無事に帰ってくるといいけれど……」

呟いて、はぎゅっとペンダントを握り締めた。

コーディネイターのミゲルがナチュラルに後れを取るなどと、尋常なことではない。

彼の実力を知らないわけではないが、油断は禁物だ。

(どうか、ミゲル兄さんを守ってね、兄さん――……)

ミゲルは、の親友だ。

きっと、守ってくれるに違いない。

そう願って、は漆黒の双眸を伏せた。

――――祈るように。

のその様を、イザークの冷たいアイスブルーの瞳が、じっと見つめていた――……。





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次回、ミゲルを殺しますと言っておきながら、結局殺せていない緋月です。

次こそ、次回こそは彼を殺します。

しかし、漸くこの連載も夢らしくなってきたと思いません?

……まだまだですか?

精進します。

突然ですが、皆さん緋月の駄文どう思われます?

いまいち反響が来ないので、どうしていけばよいのか分からないのが現状です。

ご意見ご感想などありましたら、ぜひカキコするなりメールするなりしていただけないでしょうか?

少しでも多くの方に満足していただけるように、未熟者は未熟者なりにがんばりますので。

よろしくお願いしますね。


それでは、ここまで読んでくださって、有難うございました。