どうかお願いです、神様。

これ以上、私から何も奪わないでください。

私の大切なものを、大切な人を。

これ以上、奪わないでください。







神様、この願いはそんなに、大それたものでしたか――……?



ヴァルキュリア   #04魂曲


がクルーゼ隊の一員となってから、一週間が過ぎた。

顔見知りが増えた彼女は、今日も元気に戦艦ヴェサリウスの艦内を闊歩している。

「あっ!ニコル〜vv」

廊下の角を曲がったところで、見慣れた柔らかそうな緑の髪を持つ少年の姿を見かけ、は背後から抱きついた。

彼女には、はっきりいって、乙女の恥じらい云々といったものが欠けている。もっともそれは、この姿を見れば、自ずから分かろうものである。

「ちょ……っっ!!さん!?」

「やんvv今日も可愛いvv」

「可愛いって、ちょっと!!さん!?僕、あなたと同い年なんですよ!?ミゲル!!さんを止めてください!!」

のやつ、すっかり明るくなって……ホロリ」

「ミゲル――――っっ!!」

ニコルは必死になって叫ぶ。

「煩いっっ!!」

不機嫌のオーラを背負って、ザフトの王子様(姫でも可)が立っていた。

ちなみに、がニコルを発見したのは、イザークの部屋の前である。

当然、先程からの一件は、彼に筒抜けであった。

「貴様ら!!先程から人の部屋の前でグダグダと!!下らんことで騒ぐな!!」

「あんただけの部屋じゃないでしょ。あんたとディアッカの部屋じゃない」

「煩いぞ、!!大体貴様は何をしているんだ!?」

「ニコルに抱きついてるのよ。見て分かんないの?こんなに近くなのに?……あっ!ひょっとしてあんた、老眼?

「誰が老眼だ!!誰が!?」

「だってあんた、見えないんでしょ?」

そう言いながら、は更に強く、ニコルを抱きしめる。

逃げることを諦めたのか、ニコルは最早、されるがままだ。

「見えているに決まっているだろうが!!貴様があまりにもおかしな行動をとっているから、一応聞いたまでだこのバカが!!」

「誰が何ですって〜っっ!!このオカッパ!!ハクもどき!!」

「誰がオカッパだ、このバカ女!!」

「言ったわねぇ〜!!あんたなんか、

自分の名前忘れて、魔法使いにいいように使役されてりゃいいのよ!!

この性格破綻したハク
がぁ!!」


「貴様の言っている意味が分からん!!下らんことばかりほざくな、このバカ!!」

いつの間にかはニコルを放し、イザークに詰め寄っていた。

対するイザークは腕を組み、を迎え撃っている。

「ご苦労だったな、ニコル」

ヨレヨレになったニコルが、ミゲルのほうへとトボトボ歩いていく。

それにミゲルは、ノー天気に声をかけた。

ニコルは、恨めしげにミゲルを見た。

「ミゲル……止めてくれてもいいでしょう!?」

「いやぁ、があんなに明るくなるとは思わなかったのでな」

「明るいって言うんですか?アレ」

「少なくとも、前よりはいいだろう?」

ミゲルが問うと、ニコルは生真面目な顔で、そうですね、と頷いた。

確かに、以前よりはマシだ。

あんなはもう、見たくない。

「やっぱり、花のもたらす効果ってすごいですね」

手作りだしな……(やっぱり笑える!!)」

さん、何か言ってましたか?」

「……ニコル、アレ、お前らの作戦だろ?」

イザークに紅い薔薇を持って行かせよう、だなんて。

作戦でなければ、一体なんだというのか。

「バレてましたか。実はですねぇ……」

「何よ、趣味で碁でも打ってそうな髪形のくせに!!」

「わけの分からんことばかり言うな貴様は!!アホか!?」

「言ったわねぇ!!」

ニコルの声を遮るように、二人の舌戦は続く。

そのせいで、ミゲルは聞き逃してしまった。

ニコルのいいたかったことを――……。






このままの日々が、続くかと思ってた。

ミゲル兄さんがいて、仲間や友達がいて。

こんな幸せが、いつまでも続くと思ってた。





今は、戦争中なのにね――……。





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さぁ。ミゲルを殺さなければならなくなってきました。

ゴメンよう!!

折角、空元気とはいえ、過去の傷から立ち直ったヒロインちゃん。

このあとも彼女には、辛いことが続くわけです。

少々痛いシーンなども出てくるかもしれませんが、よろしくお願いします。

しかし、夢っぽくないですな、これ。