その存在を、ここまで重く感じたことは、恐らくなかっただろう。 俺には、将来を決められた人が、いる。 俺自身、その人に愛情があるかと尋ねられたら、思わず困惑してしまうけれど。 それでも、生涯守りたいと想った人だった。 それはどちらかと言うと、肉親に対するような愛情で、恋人になる人に向けるものではないと思うけれど。 誰かを、心のそこから愛しいと想う感情。 そんなものは、俺には存在しないと想っていた。 ――――、君に会うまでは――……。 の手には、ピアスが握られていた。 ミゲルの遺品の、ピアスだ。 身につけたくとも、はピアスホールを開けていないため、それは叶わなかった。 幸いにもリング状をしていたため、はそれも、ペンダントの鎖に通すことにした。 (ずっと傍にいてね、兄さんたち) きゅうっと目を瞑り、は心の中でそう、呟く。 それは祈りに、似ていた――……。 クルーゼ隊に残った最後のジン。 それに、は搭乗した。 研ぎ澄ますは、復讐の刃。 あの艦に乗っている人間が。あの艦でモビルスーツを操縦した人間が、から兄を奪ったのだ。 許せる筈が、なかった。 『=。出撃します!』 アスランが登場する機体、イージスに続き、も出撃した。 ナチュラルとは違い、広く宇宙に進出したコーディネイターたち。 いくら艦の中がそれなりに快適とはいえ、やはりあそこは狭い。 は、軽く伸びをした。 久しぶりの、宇宙だ。 『、君は艦のほうを……』 「冗談じゃない、アスラン。あれは私の獲物だ。邪魔をするな」 『しかし……』 「安心して。足を引っ張るような無様な真似はしない」 の口調が変わったことに、アスランは気付いていた。 『鋼のヴァルキュリア』。ザフト、地球連合の双方にその名を轟かせるザフトの戦女神。その片鱗を、アスランは確かに感じていた。 アラートが鳴り響き、敵の存在を感知した。 現れたのはやはり、あの機体。 奪取すること叶わなかった、兄を殺した機体。 『キラ!』 知らずアスランは、その名を呼んでいた。 大切な親友。それがまさか、同じくらい大切になってきた少女の、敵になってしまうなんて。 できることなら、投降して欲しい。今ならまだ、間に合う。昔のように。月の幼年学校にともに通っていたころのように。傍にいて欲しい。 けれどキラに、アスランのそんな思いは伝わらない。 キラにはキラの、守りたいものがあるのだから。 そのころ、ガモフからはイザーク、ニコル、ディアッカが出撃していた。 『ヴェサリウスからは、もうアスランとが出ている!遅れをとるなよ!』 『フン、あんなヤツに』 イザークの言葉に、ディアッカは冷笑で持って答える。 アスランに負けたくは、なかった。 年下の彼に、何度煮え湯を飲まされたことか。 遅れを取るなど、冗談ではない。 イージスがビームサーベルを構えたのを見て、ストライクもまた、ビームサーベルを構えた。 けれど刃を交えることなく、二機は交錯する。 (何をしているの、アスラン!!) は思わず歯噛みした。 自分を戦わせてくれないばかりか、ストライクともまともに戦わないなんて。 『何をしているのよ、アスラン!!』 『、ここは俺に任せてほしい』 『そうはいかない。そいつは兄さんを殺した!!』 『!!お願いだから!!』 アスランは、ストライクのパイロットと話をしているようだった。 何故?とは思う。 ナチュラルと、ナチュラルごときと、いまさら何を語り合う必要があると言うのか!? なかなか動かない戦局に、ビームライフルが割って入ってきた。 『何をモタモタやっている、アスラン!!!』 『イザークか!?』 『イザーク!!』 青と白の装甲を持つ機体]102デュエルだ。 イザークはなおもビームライフルでもって撃ってくる。 ストライクが、それをかわす。 イザークが追う。 は、イザークの援護につくことにした。 二人がかりでストライクを狙うが、掠りもしない。 『ちっ!ちょこまかと。逃げの一手かよ!!』 イザークが、焦れて舌打ちした。 やや短気な傾向のある彼にとって、この局面はまったく持って不本意なものだった。 は、そんな彼をしっかりとサポートする。 やがて、ストライクは反撃に転じてきた。 しかしそれは、反撃と言うにはあまりにも、お粗末だった。 アカデミーをトップで卒業した彼らにとって、それは児戯にも等しい。 『そんな戦い方で!』 イザークは相手の反撃に、冷笑で答える。 も、冷ややかにそれを見ていた。 敵は、パワー残量などまったく考えていない。 無駄玉を使いすぎる。 このような戦い方は、PS装甲が落ちるのを早めるだけだ。 イザークはビームサーベルを構え、接近戦に持ち込む。 ストライクはそれをシールドで防いだ。 そのまま、二機は縺れ込んでゆく。 『何をやっているんだ、アスラン!イザーク!!頭を抑える!』 ディアッカ、ニコルも加わり、五機がかりでストライクを包囲する。 状況が激変したのは、次の瞬間だった。 突如舞い込んできた、エマージェンシーコール。 それは、信じられないことを伝えてきた。 『ヴェサリウスが被弾!?』 思わずイザークが、言葉を失ってしまったほど……。 何とヴェサリウスが、被弾したと言うのだ。 ありうべからざる事態に困惑し、そこに隙が生まれる。 それを逃さず、ストライクはその空域から離脱を図る。 丁度その時、帰還信号があがった。 『させるかよっ!コイツだけでも!』 『イザーク!撤退命令だぞ!』 『うるさい!腰抜け!』 ビームサーベルを片手にうってでるイザークを、アスランが止める。 ストライクは、ビームライフルを撃ってくる。 しかしその時、PS装甲が、落ちた――……。 『もらった――――っっ!!』 イザークは叫び、ストライクに切りかかる。 彼が勝利を確信したその時、思わぬ邪魔が入った。 ――――アスランがイザークが切りかかるより先に、イージスをモビルアーマーに変形させ、ストライクを捕獲したのだ……。 『何をする!?アスラン!』 「この機体、捕獲する!」 『何だと!?』 『命令は撃破だぞ!勝手なことをするな!』 『そうよ、アスラン!!何で!?ソイツは……ソイツは兄さんを殺したのよ!!』 「捕獲できるのならばそのほうがいい!撤退する!」 『アスラン!!』 アスランはそれ以上何も言わず、ガモフに向けて撤退する。 その後姿を、イザークは殺気のこもった目で見ていた。 「クソ!アイツ……!」 突如モビルアーマーが現れ、イージスを攻撃してきた。 耐え切れなくなったアスランが、ストライクを離す。 その隙にストライクは、アークエンジェルへと離脱を図った。 「キラ!」 モビルアーマーと戦闘を繰り広げながら、アスランは親友の名を呼ぶ。 けれどその声は、届かない。 はイザーク、ディアッカの後から、ストライクを追った。 装備の換装を図るストライク。 そうはさせじとイザークは接近していく。 ストライクが換装を開始し、一番無防備な状態となったその隙をついて、イザークは照準をロックした。 「やったか!?」 『危ない、イザーク!!』 の声がして、次の瞬間、彼女が乗るジンがデュエルを突き飛ばした。 デュエルの右腕を、ストライクの320ミリ超高インパルス砲アグニが撃ち抜く。 体勢を崩したイザーク。 ストライクは、なおも撃ってくる。 『さん!?大丈夫ですか!?』 「何!?!?」 の名に、イザークは思わず反応する。 見ればの乗る機体は、その肩の辺りに甚大なる被害を及ぼしていた。 イザークは、目の前が真っ暗になるのを、感じた。 感じたのは、恐怖。 そしてそれはすぐに、怒りへとその姿を変えた。 彼の大切に思う少女を傷つけたものに対する、憎悪へと……。 しかしそれ以上の攻撃を、アスランが阻んだ。 『退け!イザーク、ディアッカ!これ以上の追撃は無理だ!』 「何っ!?」 「アスランの言うとおりです!このままだと、今度はこっちのパワーが危ない!それに、さんを早く軍医に見せないと!!」 ぎりっとイザークは歯軋りをした。 ここまできて、敵の機体を撃破できなかった。 それよりも何よりも。 愛する少女を、を危険に晒してしまった。 大切にしたい、この手で守りたい。そう思う少女に、庇われてしまうなんて……。 (このままでは済まさないからな!!) ディアッカの手を借りてガモフに帰還しつつ、イザークはそう、心の中で呟いた――……。 あなたを、死なせたくないと思いました。 もうこれ以上、何も失いたくはなかったから。 だから私は、あなたを庇いました。 それがどれだけあなたの自尊心を傷つける行為か、分かってはいたけれど――……。 +−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+−+− 相も変わらず下手くそだな、戦闘シーン。 ここまでかけないとは!! 自分でもウンザリです。 はふぅぅ。精進せねば。 イザークに見せ場を作りたいんですがねぇ。 どうもこれからの彼って負けてばかりなんで。 て言うか今回、名前変換少ない気が……。 ううう。戦闘シーンってこれだから……。 負けてもかっこいい男。イザークはそれを目指して頑張りたいと思います!! それでは、ここまで読んでいただき、有難うございました。 |